2014年における LibreOffice の開発をログから振り返る (2014-12-25)
この記事は LibreOffice Advent Calendar 2014 の12月25日分です。
2014年も残すところ1週間足らずとなりましたが、この1年のうちにLibreOffice は順調にリリースが進められました。
- LibreOffice 4.2
- LibreOffice 4.2 ReleaseNotes
- LibreOffice 4.3
- LibreOffice 4.3 ReleaseNotes
そして LibreOffice 4.4 もベータ版が公開されており、おそらく来年1月末ないし2月頭にリリースされる予定です。
今回は LibreOffice の git レポジトリの master ブランチのコミットから、2014年になされた変更を追いました。Git では各コミットにはその変更がなされた日付がともないますが、レポジトリに push されるまでさらに時間がかかっている場合が多いことに注意してください。b178afc88ba97f04036e6eef9cf1ee0da987b258 が2014年最初の master におけるコミットと仮定すると、
$ git log --oneline b178afc88ba97f04036e6eef9cf1ee0da987b258.. | wc -l
25491
となるように25,000件以上のコミットがあります。バージョンごとの新規機能や相互運用性の改善はリリースノート等で取り上げられていますので、そういったもの以外で面白いものを探しました。特に、歴史が感じられるもの、トリビア、ネタを選んでいます。
以下のリストは(おおよそ)上から順に1月から12月へ向かっています。
- c32996987354d045523beaa98b5d227d161f72fb
- 1月にラトビアがユーロを通貨に導入したことを受けて。
- 10eaaac020e32f0bbb3869cecee94df0955b6a3b
- Abword の入力フィルターが登場。TDF の Document Liberation Project の成果の1つ。
- ab50bc9d4a72193c1fefcbf0652938995094bc41
- ISO 31-0に従うと、数値と単位記号の間に空白を入れるのが正式だそうです。
- e40f143bb4743f630b06e6d7a11171aa3d43889c
- 長い変数名。
- 79c6ee4513e30a39fff6dfe137aa9b6391f4ab25
- iOS 7のためにアイコンも必要なサイズを用意しなければなりません。
- 53c803004554a3a0fff26501357a183bba008a26
- 8430x11700 という大きな JPEG ファイルもサポート。
- aeeaccf59abbc485d7786486f1accc1cb4d4dbf7
- OOo1.0 というレガシーなファイル形式に保存する機能が外されました。
- dda9037e4123abe5d6faf3b19c1a7061189c1354
- news:// という謎の URL scheme。
- 51fc602184ab8d1afbfb183a3d25b1122c8b1e29
- エストニア語では二重引用符のグリフに正しいものが3種類あるらしく、ただしそのうちの1つが推奨されているとのこと。
- e27bc2293873a3b8db49761c2f5ae73516e67d20
- Collabora が技術用語のリストに加わりました。
- 7a044d08572244931b16f24f3f8cc83111b039f9
- HTML5の標準化に伴う変更。
- 2044aef13b163e8ba977013c152e919271ac4352
- Tru64 のパッケージフォーマットは setld だったそう。
- 26eb80ac7a1fa0ce56a0137e6243625c91b4c580
- IRIX のパッケージフォーマットは inst および tardist だったそう。
- 4402f80937a342f6c1e3587c93ddb2eb391214fc
- iOS も技術用語に。
- b8d8d1bd05802dfdc755dcc245e1c0cc62c0e3b2
- ネイティブスピーカーが14,000人ほどとみられるレンゴ(?)語がサポートされました。
- f6141d884b7a89a856a34dc93991dbe01ded0b6b
- STACK という静的解析ツールが試されています。
- 230309c541ff9a8683e5ef749cf2f6512ad0d9df
- lpsolve の代替となる CoinMP が導入されました。
- 066dcba00659d2f81e4ba67edd14c44ed9ec3ea2
- タイムゾーンが含まれる日付を扱うための修正。
- 07b7f86885c543a5fa2234fa2751220b232cf1d3
- ピボットテーブルのフィールドのためのホットキーが分かりやすくなりました。
- 38cf887abd4b8a0280917e31aa27632f4f341b9a
- 何が変更されているのか一見すると分かりません。
- 512de6e75d34d2144392d1e78c25446f2d0b3a35
- 昔 Windows NT Call Profiler というものが使われていたらしいです。
- 9af4ecd2b485ae4bba443eb0ec6f958fcc2e3619
- Heartbleed 対応。
- 31792ca5a2ac093bd922723acc2b07ed225e5eaa
- バージョン4.3.0.0.alpha1+に。
- 861db4c1656956c82bf21489c0068b996bb66cac
- Monkey see, monkey do という慣用句。
- 51bfb3a5af91dcd17ebc4c52845e77f530f05c6d
- Clang の AddressSanitizer が利用され始めました。
- 6b28f7d3bcc782f2f443ee6cb99f78f1c2c5bb97
- 同じく、Clang の LeakSanitizer が利用され始めました。
- cae2376f6fb8451d7b6a9e68edf4b97627d8fde4
- 技術用語に追加。これまで含まれていなかったのが意外なものも。
- 46f1a5a7de28c75a8e977909d7f6e91a22875e0c
- 技術用語に Unity と Systemd も追加。
- e1d90b31f640f5ddd781b13f53c6f61dc85b68ec
- Jessie も技術用語。
- 6f126ed6a7f375c26bfc44cb9256c0a03ad99b7b
- 廃れた Ubuntu のネームが外されました。
- c37fdd65021ab1f64aa05f83fd62fcf97088cc95
- 現在の Ubuntu のネームも技術用語。
- dea4a3b9d7182700abeb4dc756a24a9e8dea8474
- バージョン4.4.0.0.alpha0+に。
- 278baa557d18136a2641c015f7077a5838188766
- Writer は文の行末に CRLF を挿入するらしく、X11 のクリップボードから貼り付ける前に CR を落とすことに。
- 67f987f6ffcc057d3dae0a39fe7cdb680a455408
- OS X 10.10 SDK が出てきました。
- 45ba4d79d968f81f74ef0c4588fd15b1ce91153f
- LibreOffice のコマンドラインオプションに、便利なフィルターオプションが追加されました。
- 10abd657aacea884f520c97054625a94184c4aca
- 編集中の文書を閉じるときダイアログのボタンが「保存せずに閉じる」から「保存しない」になります。
- 4a2280e4a2bbc936625dc9816e5491da6ba770ac
- XSun という遺物。
- 05ed013cbc5f3b9a112e7080a52a69f456d7e506
- Windows 用ビルドには Visual Studio 2013が推奨に。
- 5a05115ee25683b5fc7c79ab418eaeed120bd3b0
- Calc で現在の日時を入力するホットキー Ctrl+; が用意されました。
- 6ab1951ea2e31f47bc9f211dd9b2681c794b8e7f
- ppc64le 対応。
- a150d06bc5cda4f18364256af859fd3e1ee70b4b
- リトアニアで2015年からユーロを導入が決定したことを受けて。
- 235fa0334e0b45c736b636ba1689e2f8c7458697
- Linux AArch64 対応。
- aba0106926ceb337035cf46611ff0d590a2af28b
- OS X については 64-bit のみでビルドするようになる。
- fcf015832466f4d902e8aeb1466309a1bc230475
- 開発の最先端である master ブランチでは C++11 が必須になりました。これによってさまざまなモダンな C++ の機能を使ったコードが書けるように。
- e7f8b9f8f558e3d862d32a73d0d91f83d7d7be6b
- Visual Studio 2012は非対応に。
- 8fcd4b640fc041a97ed982ad1f3831cb2eade061
- VMS サポートが外されました。これに続くコミットでその他の今は亡きシステムが次々に外されました。
- 211b3192f05c4120fa2dd0e23988e74bdd310830
- Windows でより高精度なタイマーを実現できる Timer Queue による実装が入りました。
- aa33dd16b0e3075f28c56656678c0f5cb7642222
- コスタリカの通貨記号は似て非なるセント記号で代用されていたようです。
- 552adfbbc6b3508eaed284675d1d76480598142c
- EBCDIC はもう使われていないだろうという話。
- c60872984e78511c621ae76ed28ba6338b6d3a68
- バージョン4.4.0.0.alpha1+に。
- 714c5df9b10cd6084fff35a0cd40d330a88f53e4
- Debian/kFreeBSD のための修正。
- 9eed0d4854623d28caf2c4d3bcdd6803db488475
- 3.0以前の NetBSD が非対応に。(しかし NetBSD の場合は3.0以前でも現役なものが多そうです。)
- fe5840aab17e366749c373e4f8683e06e40b4b05
- 「赤が十分赤くない」というちょっと詩的な問題の修正。
- d4759066933e87f6b56dde40e9e4c224bc1f723f
- Mac OS X は10.8以降が必須となりました。
- c716b3888e7e8150d1c1053ee6550afb56438b1f
- iwyu という静的解析ツールを使い始めました。
- 0adb90115596ce69e1d80becdaa39e23197fe454
- バージョン4.4.0.0.alpha2+に。
- 06a5b619a76c96783ee67bdcfd21f203d3ddb53c
- 実は sun というトークンが macro だったという話。
- 2851ce5afd0f37764cbbc2c2a9a63c7adc844311
- バージョン4.5.0.0.alpha0+に。
- 6c3ff6323e1bfd7f9ca676b2edb2647699ed405f
- Visual Studio 2013が必須になりました。
- 27d006e512028cfbc8aae00c5409d873259297d2
- Ctrl+Shift+R というホットキーでルーラーをトグルできるようになりました。
- ac403251e72826c7414d644c5e90fa7909189b92
- 何故か"Excecution"というタイポを修正すると動かなくなるという謎。
- e2a41b4415f59c2c6a75f40775a19c8ce4cbdb42
- "Andale Sans UI"というフォントがUIの既定のフォントとして使われるということを利用した OOo 時代からのハックはついに失われる模様。
長くなりましたが、以上のリストから LibreOffice の開発に生き生きとしたものを感じていただければ幸いです。おそらく来年も LibreOffice はさらに多くのユーザーに使われ、さらに多くの貢献に支えられて、大きく変わっていくものと期待されます。
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