"C++ Concurrency in Action: Practical Multithreading"は、Manning Publicationsから出版されている定評あるシリーズの1つで、C++11の標準threadライブラリについて詳述している良著です。ポータビリティを損なわずにthreadを利用する手段として標準ライブラリが果たす役割は重要であり、この本はこのライブラリを使う上で欠かせない情報を提供しています。
前半の内容では、C++11の仕様で定義されている関数やクラスといった各要素を解説しています。Chapter 8とそれ以降の章では、効率良いconcurrent codeを設計するために考慮すべきポイントなどの話題についてカバーしています。例えば、メモリキャッシュのfalse sharingが生じるようなメモリアクセスのパターンに陥らないデータ構造を選択する、といった議論が展開されています。さらに、巻末にあるAppendix Dには、C++11の標準thread(およびその関連)ライブラリについての100ページ超のリファレンスが含まれているのも実用的です。