近年日本の人口が減少しており、喫緊の課題として少子化対策が求められていると一般に考えられています。しかし、人口増減の傾向を表す(粗)出生率を主な基準にして状況を判断することはあまり得策ではないかもしれません。その理由の1つとして、出生率は集団ごとに(例えば国ごとに)望ましい範囲が異なることが挙げられます。この記事では、出生率だけでなく人口の二階微分に出てくる係数を指標として注視することを提案します。
ここでは要点を明らかにするため話を単純にし、外部から人の流入・流出のない集団のモデルを考えます。まず説明に用いる記号を定義します。
これは
そのような仮定をおかない場合でも、上式の両辺を微分した後代入することで
なお、生態学の数理モデルで集団の個体数の二階微分に注目するべきという考え方は既に[2]で見られます。
[1] Donaldson, N. Math 3D (44248) - Winter 2021 Lecture Note: Population models. https://www.math.uci.edu/~ndonalds/math3d/popmodels.pdf
[2] Clark, J.P., 1971. The Second Derivative and Population Modeling. Ecology 52, 606–613. doi:10.2307/1934148